萩原 朔太郎
愛の詩集
私の友人、室生犀星の芸術とその人物に就いて、悉しく私の記録を認めるならば、ここに私は一冊の書物を編みあげねばならない。それほど私は彼に就いて多くを知りすぎて居る。それほど私と彼とは密接な兄弟的友情をもつて居る。
およそ私たちのかうした友情は、世にも珍なる彼のはればれしき男性的性情と、やや女性的で憂鬱がちなる私の貧しき性情との奇蹟めいた会遇によつて結びつけられた。
主として運命は我等を導いて行つた。
年久しくも友の求めて居たものは、高貴なる貴族的の人格とその教養ある趣味性であつた。そして私の貴族めいたエゴイズムの思想と、一種の偏重した趣味性とは、不思議にも我が友のいたく悦ぶ所となつた。