山川 方夫

箱の中のあなた

「あの、失礼ですが」

なめらかな都会ふうの男の声がいった。彼女は、臆病と疑惑とがいっしょになったようなぎごちない様子で、立ち止った。

丘の上は、すばらしい夕焼けで赤く染っていた。馬の背のような地面に、まばらな木が細長い影をつくっていた。

「いい景色ですねえ、ほんとに。……これ、なんの木です?」

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