山之口 貘
雨あがり
その日、朝は、どしゃ降りなのであったが、午後になると、からりと晴れて、縁側に陽がさした。硝子戸を開け放って、ぼくは机を前にしていた。女房は、ぼくの傍で繕いものをしていた。木戸の風鈴が、鳴りそこないみたいに鳴って、ミミコが帰って来たのである。
「ただいまあ」
「おや、おかえんなさい」
女房は、そういいながら、針をおいて、縁側に出たのであるが、
山之口 貘
その日、朝は、どしゃ降りなのであったが、午後になると、からりと晴れて、縁側に陽がさした。硝子戸を開け放って、ぼくは机を前にしていた。女房は、ぼくの傍で繕いものをしていた。木戸の風鈴が、鳴りそこないみたいに鳴って、ミミコが帰って来たのである。
「ただいまあ」
「おや、おかえんなさい」
女房は、そういいながら、針をおいて、縁側に出たのであるが、