江戸川 乱歩

仮面の恐怖王

東京上野公園の不忍池のそばに、ふしぎな建物がたちました。両国のもとの国技館をぐっと小さくしたような、まるい建物で、外がわの壁も、まる屋根も、ぜんぶ、まっ白にぬってあるのです。そして窓というものが、ひとつもありません。

正面に小さな入口があって、その入口の上に「中曾夫人ロウ人形館」というかんばんがかかっています。

イギリスのロンドンにタッソー夫人のロウ人形館というのがあって、世界じゅうに知られています。この不忍池のロウ人形館は、それをまねたものなのです。タッソーという夫人の名をフランス読みにすると、チュッソーとなります。「中曾夫人」というのはチュッソーをもじったものにちがいありません。そのまるい建物は二階だてに地下室があり、その中を見物人の歩く道がぐるぐるまわっていて、道のかたがわ、または両がわに、いろいろなロウ人形の場面がつくってあるのです。

ロウ人形はみんな人間とおなじ大きさで、それに服がきせてあるのですが、ロウでできた顔がまるで生きているように見えるので、じつにきみがわるいのです。

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