野村 胡堂

音波の殺人

流行歌手の死

夜中の十二時――電気時計の針は音もなく翌る日の最初の時を指すと、社会部長の千種十次郎は、最後の原稿を一と纏めにして、ポンと統一部の助手の机に投りました。

「さア、これでお了いだ」

千種はガードの熱いおでんと、中野のアパートの温いベッドと――何方にしようかと考えて居りました。まる十二時間の労働で、心も身体もボロ切れのように疲れ果てて、此上は、地球そのものを爆弾にして、口火を点ずるような大事件がもちあがっても、「畜生ッ一行も書いてやるもんか」と言った自棄な気持になるのでした。

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