野村 胡堂

死の予告

伯爵の悩み

「千種君、暫らく此処へ掛けたまえ、平常あまり人が来ないから、掃除は行届かないが、その代り此辺なら決して話を人に聞かれる心配は無い」

私のためには旧藩主に当る元伯爵海原光栄氏は、尊大が通りものの顔を柔げて、広大な庭園の奥の、洒落た四阿の中に私を導き入れました。

真中から綺麗に分けた毛は、いくらか胡麻塩になりかけましたが、血色の良い見上げるような若い頃美男で鳴らした俤を充分留めて居ります。

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