柳 宗悦

雲石紀行

津和野

四年ほど前津和野を訪ねたことがある。なまこ塀の武士屋敷が両側にならんでいる。古格をこれだけよく保った町も珍しい。私はまた美しいこの通りを見たいと思った。だが山間の孤立したこんな町が、どんな運命をもつか。過去の町として見れば美しい、だが来るべき町として、心元ない感じを受けた。二度訪れる折が来た。そうして今度は明るい気持ちでその町を見ることが出来た。地理的にもすべてが遅れがちなこの町を、一人で背負っても立とうとしている人間に逢えたからだ。望月氏のもっている津和野への愛はこの町を甦らすだろう。外からいじめられるこの町は、内から深まるより途はない。企てられつつある学藝と工藝と林業とに津和野の運命はかかっている。そうしておそらくそれより正しい基礎はあるまい。私には過去の津和野が面白かった。しかし今は十年二十年後の津和野のことが一層面白く思える。

益田にて

石見益田には二つ心を引かれるものがある。一つは最も有名な雪舟の庭、一つは名もない粗陶器。誰も後者について語ったものはなかろう、ここで味方になって弁護しよう。もっとも窯は益田のものではないが、今も細々と場末の荒物屋に残り、大概は埃だらけになって高い棚の隅か、縁の下にうずくまっている。

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