柳 宗悦
樺細工の道
一
幸いにも日本の各地には、日本固有の藝能が幾多残る。だがこの名誉を負うのは、もはや中央の都会ではない。日本の固有性はいつにかかって地方にある。そのためそれらのものをある人は、取り残されたものとして、古い形式の中に入れてしまう。だが今日のように国民の意識が擡頭して来ると、固有性の弱い都市文化では、力がないことが分る。振り返るとそこには日本性の退歩が著しいのを感じる。だから色々の点で、地方の文化が重い意味を示してくる。
だがその地方性も、ただ観念的なものに終っては力がない。どこまでも具体的な姿であることが望ましい。ここで造形の分野がどんなに頼りになるか知れない。ここでは物に即して日本を語れるのである。
日本にはかかる固有なものが色々ある。だがその中で性質が一番はっきりしている一つは角館の樺細工である。樺細工は何も角館と限ったことはない。だがここほどその仕事が見事な発達を示している所はない。