柳 宗悦
益子の絵土瓶
一
栃木県益子の窯場で長らく土瓶の絵附をしていた皆川マスというお婆さんのことは、既に多くの方々も知ってお出での事と思います。その山水絵や枝梅の土瓶は、焼物に眼を注ぐほどの人なら、おそらく誰でも見慣れているものでありましょう。誠にありふれた品物でありますが、それを対象にこの一文を草したく思いますのは、実はそれが美に関する幾多の根本問題を孕んでいると思われるからであります。それに多くの方々によく知られている品物であるだけに、語るのに都合のよい仲立であると思われます。お婆さんの齢はもう八旬を越えましたので、その筆の一生も終りに近づきつつあることと思われます。それ故この一文がいくらかでも、その生涯を紀念するものであることを希いつつ、ここに筆を執る次第であります。
「皆川マス女の絵」のキャプション付きの図
皆川マス女の絵