吉川 英治新書太閤記春の客永禄五年の正月、信長は二十九歳の元旦を迎えた。まだほの暗いうちに、彼は起って浴室にはいると、水浴みして身を浄めていた。井水はかえって暖かく、白いものが立ち昇っているが、それを汲み上げる間に、水桶の底は凍りついてしまう。青空文庫の作品カード