三好 達治
オルゴール
人形のをぢさん守屋三郎さんは、支那文学の奥野信太郎さんと漫画家の横山隆一さんとの丁度中間位の恰幅であつて、容貌はどこやらそのお二人に似てゐる。笑顔のいい気軽なところも、頭の禿ぐあひもまた似てゐる。お酒はいけないさうだから、その点は別として、先のお二人と共通する一種の童心ないしは仙骨みたいなものが守屋さんに於てもその風貌にあふれてゐるのが、工房に案内されてまづ私に納得された。
工房は私ども二人の訪問者と主人と三人の膝を容れるのがやつとといふ空間をあました面積で、たいへん小造りにできてゐた。素人の手造りらしい感じのものであつた。一寸私どもは魔法の小箱に閉ぢこめられたやうな感じであつた。主人の仕事机らしいものはその奥まつたあたりにあつて、机上には「幸福のきのこ」といふ可愛いい松茸ができかかつてゐた。松茸は赤黄緑紫灰色とりどりに鮮明な絵具をぬられてくつきりと水玉の斑点を意匠に散らした寸にもたらないもので、それが兵隊のやうに並んでゐた。
「かういふものを息抜きにやつてゐるんですよ……」
といはれるのは、別の根気な仕事はさうさう毎日続くものではないから、といふ意味であつた。