坂口 安吾

安吾史譚

天草四郎という美少年は実在した人物には相違ないが、確実な史料から彼の人物を知ることはほとんどできない。

天草島原の乱のテンマツ自体が、パジェスの記事や、海上から原城を砲撃したオランダの船長の書いたものなどで日本の史料を補っているような有様であるが、史料の筆者たる日本人も外国人も、一揆の内部のことには知識がなく、外部の日本人は特に切支丹宗門の内情に不案内であるし、外国人も間接的な風聞を書きとめている程度にすぎない。

籠城の一揆軍は全滅したと伝えられ、生き残りは油絵師の山田右衛門作ぐらいに考えられているが、だんだんそうではないことが分ってきたようだ。

五島には参謀長格の大幹部が脱出土着してその子孫が現存し、系図や遺品もあるそうで、他にも落武者がかなりあったようだ。幕府の聯合軍たる各藩へ私的な縁故を辿ったりして降伏して仕えるようになったのもあり、それは幕府の記録に残らなかっただけのようだ。

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