伊藤 野枝

従妹に

今、私の頭の中で二つのものが縺れ合つて私をいろいろに迷はして居ります。

私は今まで斯うして幾度きみちやんに手紙を書きかけたか知れないのです。けれども私の書いたものが果して正当に何の誤もなくきみちやんに理解されるかどうかとそれを考へては、若しきみちやんに理解が出来なかつたときにはきみちやんの為めにもまた私の為にも大変不幸だと思はれますので止めました。けれども、どうしても書きたくてたまらないので。二つのものと云ふのは、その書きたいのと、書いて、もし悪い結果になるといけないと云ふ心配とを云つたのです。

きみちやんにはね、姉さんがどう見えますか? 恐らくきみちやんには、私をいゝ人かわるい人かと聞かれたら、一寸答へに困るでせう? もしかしたらきみちやんは、姉さんはいけない人だと思つてゐるかもしれませんね、それにしてもなほ、いろ/\な疑問が沢山に私についてあるだらうと思ひます。その疑問は決して私自身ばかりでなくきみちやんにとつてもきつと大事なものかもしれません。屹度私がこれから書くことを読んで行くうちには思ひあたることがあるだらうと思ひます。

私のやつたことに就いてきみちやんは皆はしらないのでせう? 叔母さんなんかの考へでは、私は本当に仕様のない堕落した我儘娘だとでも思つてお出でせう。私の今迄の行為を極く普通な、世間的に観れば誰にでもさうとしか思へないことは私自身にも分ります。けれども私にはまた私の理屈があるのです。そして私は、それを一番本当だと信じて居ります。何事によらずすべて人の考へと云ふものはその人自身より他の人には何にも分らないものだと思ひます。さうでせう? きみちやんが何か考へて

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