伊藤 野枝

書簡 山田邦子宛

宛先  東京代々木

発信地 小石川区指ヶ谷町 青鞜社

お手紙拝見いたしました。おかねもたしかに頂だい致しました。ありがたく御礼申上げます。この間から、あなたにはお目に懸りに伺はふか、それとも手紙でと、いろ/\に考へて居りましたの。先日の永いお手紙に返事を出しそびれまして、さぞお腹立のことと存じ、そのおわびもあり、それからわざ/\お持ち下さいました御歌集についても、まづしい感想でもと思ひながら、今月号に何の御紹介もいたしませんで、そのおわびにもとおもひまして、かたがたとても手紙では申上きれませんし、是非伺はうと思つて居りましたのに、先きにあのやうなお手紙をいただきまして、本当に恐縮いたしました。御歌集については九月にゆる/\少しながく書いて見る気が御座いますので、少し時期はのびますがおゆるしをお願ひする気でをりました、何卒あしからずおゆるし下さい。

いつぞやは私の方でもぜひおわびしなければなりません。あんなにとり乱してをりましたので自分ながら困つて仕舞ひました。そうしてあなたに失礼なおもひをいたしまして、私は後で本当に私こそあなたに済まなくて後悔いたしてをりました。それだのにあなたから反対にあんなお手紙をいただきまして、すつかりどぎまぎして仕舞ひました。そのこと直ぐに御返事を書かうと思ひ/\つい日頃の不精のせいで毎日おもひくらしてゐながら一日一日と遠ざかつて、何となくあなたにはすまない/\と思ひながら出しそびれてそのままになつて仕舞ひました。けれども決して横着な気があつたのでは御座いませんから何卒おゆるし下さいまし。国へは十六七日頃立つつもりで居りますから、出来ればその前に一度お

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