伊藤 野枝
書簡 大杉栄宛
宛先 東京市麹町区三番町六四 第一福四萬館発信地 千葉県夷隅郡御宿 上野屋旅館
今日あなたからお手紙を頂けようとは思へませんでしたのに、本当にうれしうございました。
今頃はあなたは何をしてゐらつしやるのでせう。お午の御飯をすまして、また書物にかぢりついてゐました処に、あなたのお手紙が来たのです。また少し会ひたいと云ふ気持が起つて来ました。女中たちが、旦那様はお出でにならないのですかつて頻りに聞きますの。今にゐらつしやるよつて云ひましたら、何時です/\つてうるさいんです。皆なが見たがつてゐるんですよ。私も見たいから、早くゐらして下さい。
中央公論の方、駄目では困りますね。もつと他の書店に、いつぞやあなたが云つてゐらした処に『雑音』をお聞き下さいな。孤月氏は来ませんか。若し見えたら、文章世界に書く約束で西村(渚山)氏に聞いて頂けないかつて、お聞きになつて御覧なさいな。駄目でせうか。