伊藤 野枝
書簡 大杉栄宛
宛先 東京市麹町区三番町六四 第一福四萬館発信地 千葉県夷隅郡御宿 上野屋旅館
今、安成(二郎)さんがお帰りになつたところです。私は何もお話も書きもしないつもりでしたけれど、折角あなたの紹介でこんな処までゐらしつたのですから、書くだけは御約束いたしました。けれども、まだ何を書かうと云ふあてもつきませんのです。でも、大変静かに気持よくお話いたしました。
あなたのけんかの話を伺ひました。どうしてそんな乱暴な事をなさつたの。堺さんまでひどい目にお合はせになつたのですつてね。虫の居所でも悪かつたのですか。野依さんは何を云つたのですか。何んだか気になりますわ。私の名も出たんですつてね。何んだかお目にかかつてお聞きしたいやうな事が沢山ありますわ。
安成さんがお帰りになる時に一緒に行きたいやうでしたわ。