中村 地平
南方郵信
一
九州山脈に源を発したO川は、黄濁した体で日向の国の平原をうねり、くねり、末は太平洋に注いでいる。三十六里もある長い川であるが、最後に黒潮と激突しようとする一線には、海岸線に沿った砂浜が、両方から腕のように延びてきて、中に深淵の入江を抱いている。
港というには面積がせまく、ハマオモトが固く根をはって点在している砂丘の垣ひとえ外には、小さな汽船ぐらいは忽ちひと呑みにするほどの荒浪が猛り狂っているから、その入江には出入りする船舶の数もすくない。わずかに九州山脈にとれる木炭や、日向米などの物資を収集するための、上方通いの帆船が二三艘、帆をおろした柱だけの姿を息んでいるのに過ぎない。その荒寥とした眺めのなかの柱の周囲を鴎の群が、大きな翼で自分の体をたたきながら、低く、高く、群れとんでいる。
鴎の群に迎えられて、牧の旦那の家の有ち船である第一、第二の海竜丸は、この港湾らしい設備はなにひとつ有ってはいない素朴な港に、年に一度か二度、追手の風を帆いっぱいにはらませて、上方から帰ってくる。