伊藤 野枝
書簡 大杉栄宛
宛先 東京市麹町区三番町六四 第一福四萬館発信地 千葉県夷隅郡御宿 上野屋旅館
雑誌ありがたう御座いました。今皆よんで見ました。昨日からの不快が少し減じました。この位方々でやつつけられゝばいゝ気持になります。まけをしみでなく、あんまり皆がいい気になつてゐる馬鹿さ加減がをかしくなつて来ますもの、よくも/\口をそろへて下らないことを云つたものですね、すつかり痛快になつてしまひます。随分私は憎まれ者ですね。恋をすれば何時も石を投げられるにはきまつてゐますがね、少し烈しすぎますね、あなたに余程可愛がつて頂かないぢやこのうめ合せはつきませんよ、本当にあんまり可愛相ぢやありませんか、でも、私黙つてゐればよかつたと思ひます。あんなものなんか書かずにゐて、これから先に、ほんたうのことが分つた時に、皆を片つぱしから言ひまくつてやればよかつたと思ひますよ。
今頃は原稿が届いたでせうね、孤月には少し遠慮してやりましたが、あんなことを言つてゐる人だと知つたら、あのくだらなさ加減をもつとありのまゝにさらしてやればよかつたと思ひます。本当に馬鹿ですね。
もう何かゞすつかりきまつてしまひましたから、一日も早く東京に帰りたいと思ひます。どうかして十日位までにはたちたいと思ひます。何処にもゆくところもないし、することもなく一人で退屈してしまひます。昨日からまた本をよみました。女の世界の原稿も半分は書けましたけれど、まだ皆迄書き終りません。それから大阪の方の原稿を、お送り下さるに菊池氏の宛名にして下さい。今朝電話をかけにゆかうと思ひましたけれど、お金がないからよしました。お留守だとつまらないから。