伊藤 野枝
編輯室より
□「武者小路氏に」 十二月号白樺の誌上で私が「世間知らず」を軽蔑してゐるさうだとのことをお書きになつたのを拝見して私は本当に意外に存じました。本当に心外に思ひます。
私は他人の作品に対して無暗とさう軽蔑したり悪く云つたりしたことは御座いません。何時でも私は自分で創作するときの気持や何かに思ひ合はせては他人のものを読んだり批評したりする時にはどんな小さなつまらないものに対しても相当の敬意を払ふことは忘れません。殊に私はもうずつと以前からあなたのお書きになるものは可なり深い注意と尊敬をもつて忠実に拝見して居ります。だのに私が「世間知らず」を軽蔑したなんと云はれることは本当に意外で御座います。
私はC子氏に対しては仰しやる通りに或る侮蔑を持つて居ります。然しそれは、あなたには些の関係もないC子氏で御座います。私は「世間知らず」後のC子氏は存じません。「世間知らず」以前のC子氏に対しては到底多少の侮蔑の念を持たずにはゐられません。私にとつてはそのC子氏とくらべられることは本当に不快で御座いました。ですからその通りのことを書きました。然し今考へて見ますと私はその発表するときに僅かな不注意の為めにあなたに抗議を申込まれるやうなことを書きました。「動揺」の中に「白樺のM氏と可なり青鞜社でも迷惑を感じたC子氏との恋にくらべられたのは不快な気がした云々」と云ふのがそれです。あれを書きますときの私はかなり激してゐました。そして急ぎました。ですからさういふ局部々々に深い注意を払つてゐる余裕がなかつたので御座います。併し私がこうかきましてもあなたはそれが卑怯な言ひのがれか浅薄な弁解としかお思ひに