江戸川 乱歩
恐ろしき錯誤
「勝ったぞ、勝ったぞ、勝ったぞ……」
北川氏の頭の中には、勝ったという意識だけが、風車の様に旋転していた。他のことは何も思わなかった。
彼は今、どこを歩いているのやら、どこへ行こうとしているのやら、まるで知らなかった。第一、歩いているという、そのことすらも意識しなかった。
往来の人達は妙な顔をして、彼の変てこな歩きぶりを眺めた。酔っぱらいにしては顔色が尋常だった。病気にしては元気があった。
江戸川 乱歩
「勝ったぞ、勝ったぞ、勝ったぞ……」
北川氏の頭の中には、勝ったという意識だけが、風車の様に旋転していた。他のことは何も思わなかった。
彼は今、どこを歩いているのやら、どこへ行こうとしているのやら、まるで知らなかった。第一、歩いているという、そのことすらも意識しなかった。
往来の人達は妙な顔をして、彼の変てこな歩きぶりを眺めた。酔っぱらいにしては顔色が尋常だった。病気にしては元気があった。