野村 胡堂

銭形平次捕物控

【第一回】

一

その晩、出雲屋の小梅の寮は、ハチ切れそうな騒ぎでした。

出雲屋の主人、岩太郎が、野幇間の奇月の仲人で、新たにお滝という召使を雇い入れ、その御披露やらお祝やらを兼ねて、通人出雲屋岩太郎が、日頃昵近にして居る友達や、お取巻の面々を、小梅の寮に招き、一刻千金と言われる春の宵を、呑んで騒いで、頃合を見計って船と駕籠で送り返そうという寸法だったのです。

青空文庫の作品カード