野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、世の中に怪談というものはあるでしょうか」

八五郎はまた、途方もないことを持込んでくるのです。五月も過ぎたある日、青葉によし、初鰹によし、そして時鳥によしという結構な日をぼんやり籠っていると、ときどきはこんな災難にも逢わなければならぬ平次です。

「ケエダン――それはなんだい、まだ食べたことはないが――」

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