中谷 宇吉郎

桂浜

漱石の俳句の中に

寅彦桂浜の石数十顆を送る涼しさや石握り見る掌

という句がある。如何にも涼しさのあふれる名品である。そしてその涼しさの中に、寅彦の漱石に対する思慕の情と、漱石のそれに応えるこころとが、感じとれる。

この句は、明治三十二年の作で、当時漱石は五高で英語を教えていて、寅彦はその愛された生徒の一人であった。この年の夏、寅彦は五高を卒業して、東大の物理学科に入学した。桂浜の石を贈ったのは、多分その夏休みの時であろう。

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