中谷 宇吉郎
雪の化石2
雪の化石をつくろうと思い立ったのは、もう二十年以上も昔の話である。
昭和五年に新しく出来た北大の理学部へ赴任して、間もなく雪の研究にとりかかった。そして冬ごとに、十勝岳の白銀荘へ出かけて行って、雪の結晶の顕微鏡写真をせっせと撮っていた。
十勝岳の雪は、結晶の美しさとその種類の豊富さという点ではおそらく世界にも類例が少ないように思われる。その後いろいろなところで、雪を調べてみたが、十勝岳に匹敵しうるところは、グリーンランドの氷冠上くらいのものである。
二、三年十勝岳へ通っているうちに、何とかしてこの美しい雪の結晶を、そのまま固めて、暖国の子供たちに見せてやれないものかと思うようになった。動機は、ドイツの雑誌に、氷の化石の話が出ていたのを見たからである。