中谷 宇吉郎
農業物理学夜話
一
終戦と同時に、ニセコの観測所は、当然閉鎖の運命にあった。
親元の技術院が解散して孤児になったこの研究所は、まず解体するより仕方がない。それにこの研究所の使命であった航空気象学の問題も、もう我が国では用が無くなった今日、それを一つ育て上げてみようという天邪鬼の篤志家も、今日の情勢ではまず求められない。
技術院の方は、戦争がすんだから戦時研究は中止、従ってその施設は取り壊し、という風に話は極めて明瞭であるが、私たちにしてみれば、過去五年間にわたって、苦心して作り上げた研究所を、そのまま壊してしまうのは、ちょっと忍びないところがある。