中谷 宇吉郎
雪は資源である
昭和二十三年の冬、北海道の大雪山で雪の調査をしたことがある。
雪の調査というのは、雪の深さを測るのではなく、雪の目方を測る調査なのである。雪は春になれば、解けて川へ流れ出るわけであるが、その時どれだけの水量が出るかは、冬の終りに山に積っている雪の量できまる。目方は雪がとけて水になっても変らないから、雪の目方を測っておけば、雪解け水の量も分ることになる。
目的が川へ流れ出る水の量を予知するところにあるので、この調査は、一つの川の集水区域全体について行なう必要がある。或る川の集水区域というのは、前にも説明したように、この区域の周囲をめぐっている分水嶺でかこまれた地域のことである。ちょっとした川でもこの地域は非常に広いので、調査はなかなか困難である。
この種の調査は、アメリカでは、もう二十年もの昔から、毎年行なわれている。アメリカは水の乏しい国で、とくに西半分のあの広大な土地は、春から秋にかけて、ほとんど雨が降らないので、大部分が沙漠又は半沙漠地帯になっている。普通では人間の住めない土地である。ただところどころに川があるので、その流れに沿ったところに緑地帯があって、其処で農耕をしたり、又都会が出来ている。