中谷 宇吉郎

アメリカの沙漠

今世紀の初頭から着手されたアメリカの綜合開発は、今日かがやかしい成果をあげている。その仕事の九割以上は、沙漠の征服にある。即ち水資源に乏しいアメリカでは、大きいダムを造って、雪解けの洪水を一度全部その貯水湖にため、その水を一年中を通じて大切に使うという新しい開発方式を採り、ついに、沙漠の征服に成功したのである。この開発の要点は、それで高いダムの建設という問題に落ちつくわけである。今日、日本の到るところでダムの建設がやかましく論ぜられているのは、アメリカにおける綜合開発の成功に刺戟されたからである。それでわれわれは、日本の国土開発を論ずる前に、まずアメリカの風土と、それに対する人間のたたかいの跡とを覗いてみる必要がある。

一 水に乏しい国アメリカ

ダムの建設のような、自然を直接相手とした事業の遂行には、その国の風土に基いた、地味な、そして基礎的な研究が必要である。その一例をコロラド流域の開発にみることにしよう。

コロラド河に造られたボルダー・ダムは、この一つのダムだけで、年間を通じて百四万キロワットという驚くべき発電能力を有している。またこのダムの建設によって、下流のコロラド河は一年を通じて、全然水位の変らない河となった。そういう水位の一定した河からは、水をとることが非常に簡単である。それで灌漑用水も、水道水も、工業用水も、自由にとれるようになった。

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