江戸川 乱歩
黒蜥蜴
この国でも一夜に数千羽の七面鳥がしめられるという、あるクリスマス・イヴの出来事だ。
帝都最大の殷賑地帯、ネオン・ライトの闇夜の虹が、幾万の通行者を五色にそめるG街、その表通りを一歩裏へ入ると、そこにこの都の暗黒街が横たわっている。
G街の方は、午後十一時ともなれば、夜の人種にとってはまことにあっけなく、しかし帝都の代表街にふさわしい行儀よさで、ほとんど人通りがとだえてしまうのだが、それと引き違いに、背中合わせの暗黒街がにぎわい始め、午前二時三時頃までも、男女のあくなき享楽児どもが、窓をとざした建物の薄くらがりの中に、ウヨウヨとうごめきつづける。
今もいうあるクリスマス・イヴの午前一時頃、その暗黒街のとある巨大な建物、外部から見たのではまるで空家のようなまっ暗な建物の中に、けたはずれな、狂気めいた大夜会が、今、最高潮に達していた。