丘 浅次郎

民族の発展と理科

わが国は今より十数年前に一度支那と戦うて勝ち、また数年前には世界の強国なるロシアと戦うてこれに勝ち、その結果として国の位置が非常に進んで、一等国と称せられるにいたった、これは大いに喜ぶべきことである。しかしながら何事でも名誉が上がれば、それとともに責任も重くなるもので、一等国といわれる位置を保ってますます発展してゆくには、今後はよほどの骨折りを要する。それについてはまず従来の一等国とわが国とをくらべてみて、各方面における優劣を調べ、もしわがほうに優った点があったならば、これはよろしく保護していつまでも他に優った位置を失わぬようにし、また少しでも他に劣ったところがあるならばこれは力をつくして一刻もはやく、他に追いつき、さらに他を追いこすようにと心掛けねばならぬ。

およそ一民族が隆盛におもむくには必要な条件が数多くある。すなわち人民の身体が強壮でなければならず、勇気もなければならぬ、意志の強固なことも必要であれば、道徳の正しいことも必要であり、特に協力一致の精神に富んで国を挙げて敵に当たるの覚悟がなければならぬ。しかしながら今日実際においていかなる国が最も勢を得ているかというと、たしかに文明的新知識の進んだ国である。すべて他の方面が対等である場合には、文明的新知識の一歩でも先へ進んだ国のほうが、今後も競争に勝つ見込みが多いに定まっているゆえ、いずれの民族でもその将来の発展をはかるには、よほどこの点に重きをおかねばならぬ。今この方面についてわが国と他の一等国とを比較してみると、はなはだ残念ながら現今のわが国は欧米の旧一等国よりも非常に劣っていてほとんど足もとにも達しない。このことは自

青空文庫の作品カード