中谷 宇吉郎
英国日食班の印象
昨年の秋C・T・Rウイルソン先生からの手紙で、ストラットン教授の一行が今度の日食観測に北海道の方へ行くことになったから宜敷くとのことであった。その後何の消息もなかったのであるが、新聞紙の上で愈々一行が日本へ着いたことを知って、もうそんな時機になったのかと思う位であった。ところが四月の末に初めてストラットン教授からの手紙で、三十日に札幌へ着くから仕事の上の打合せで会いたいとのことであった。実は友人の陸軍のN少佐が剣橋で約一か年気象の研究をしたいという話が前にあって、日本から持って行った器械で向うで野外観測をしたいというのであった。英国側でもそれはちょっと困る話であろうと思ったのであるが、兎に角頼んでみたところ、ストラットン教授が心よく引受けてくれて、剣橋の太陽物理学観測所で万端の便宜をはかって研究をさせてくれたことが最近あったのである。それで今度ストラットン教授が北海道へきた場合に、観測の上では出来るだけの便宜を得られることを内心希望していた次第なのである。
一行の先発隊はストラットン教授の外に印度のコダイカナルの太陽研究所長ロイヅ博士とストラットン教授の無電の助手バグノルド少佐との三名であった。会ってみるとこのロイヅ博士は以前に電気火花の優れた論文を Phil. Trans. に出されたことがあり、自分の専門の仕事との関係上十分知悉していた人なのである。予期しなかったことだけに互に奇遇を喜ぶような気持になって、一晩泊りの短い滞在で観測地の方へ向う一行を見送った時には非常に親しい感情が醸されていた。ストラットン教授は「仕事が第一、見物は第二」というモットーで、ほとんど観測準備の話