江戸川 乱歩

鬼

生腕

探偵小説家の殿村昌一は、その夏、郷里長野県のS村へ帰省していた。

S村は四方を山にとざされ、殆ど段畑ばかりで暮しを立てている様な、淋しい寒村であったが、その陰鬱な空気が、探偵小説家を喜ばせた。

平地に比べて、日中が半分程しかなかった。朝の間は、朝霧が立ちこめていて、お昼頃ちょっと日光がさしたかと思うと、もう夕方であった。

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