山本 周五郎

朝顔草紙

一

部屋へ入ると直ぐ、父の様子が毎もと違うのを信太郎は感じた。

「お呼びでございますか」「うむ、――」信右衛門は好物の莨を喫っていたが、信太郎の坐るのを待って静かに煙管を措いた。

「突然のことで驚くかも知れぬが、そのほう明日江戸を立って、故郷まで行って来て貰いたいのだ」

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