山本 周五郎

女は同じ物語

一

「まあ諦めるんだな、しょうがない、安永の娘をもらうんだ」と竜右衛門がその息子に云った、「どんな娘でも、結婚してしまえば同じようなものだ、娘のうちはいろいろ違うようにみえる、或る意味では慥かに違うところもある、が、或る意味では、女はすべて同じようなものだ、おまえのお母さんと、枝島の叔母さんを比べてみろ、――私は初めはお母さんよりも、枝島の、……いや、まあいい」と竜右衛門は云った、「とにかく、私の意見はこれだけだ」

二

梶竜右衛門は二千百三十石の城代家老である、年は四十七歳。妻のさわは四十二歳になり、一人息子の広一郎は二十六歳であった。梶家では奥の召使を七人使っていた。これは三月から三月まで、一年限りの行儀見習いで、城下の富裕な商家とか、近郷の大地主の娘たちのうち、梶夫人によって、厳重に選ばれたものがあがるのであった。――その年の五月、梶夫人は良人に向って、新しい小間使のなかのよのという娘を、広一郎の侍女にすると云った。竜右衛門は少しおどろいた、未婚の息子に侍女をつけるというのは、武家の習慣としては新式のほうであるし、従来の妻の主義からすれば、むしろ由ありげであった。

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