山本 周五郎

金五十両

一

遠江のくに浜松の町はずれに、「柏屋」という宿があった。

城下で指折りの旅館「柏屋孫兵衛」の出店として始まり、ごく小さな旅籠だったのが、ちょっと変った庖丁ぶりの料理人がいて、それが城下の富商や近在の物持たちのにんきを呼び、しぜんと料理茶屋のようなかたちになってしまった。

見つきは軒の低い古ぼけた宿だが、奥には二階造りに離屋の付いた建物があり、女中たちも若い綺麗なのが十人あまりいた。

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