山本 周五郎
あだこ
一
曽我十兵衛はいきなり小林半三郎を殴りつけた。
そのとき半三郎は酒を飲んでいて、十兵衛が玄関で案内を乞う声を聞いた。誰もいないのだから出てゆく者はない。十兵衛は高い声で三度呼び、それから玄関の脇の折戸をあけて、庭へはいって来たのだ。
――津軽から帰ったんだな。
山本 周五郎
一
曽我十兵衛はいきなり小林半三郎を殴りつけた。
そのとき半三郎は酒を飲んでいて、十兵衛が玄関で案内を乞う声を聞いた。誰もいないのだから出てゆく者はない。十兵衛は高い声で三度呼び、それから玄関の脇の折戸をあけて、庭へはいって来たのだ。
――津軽から帰ったんだな。