山本 周五郎

内蔵允留守

一

岡田虎之助は道が二岐になっているところまで来て立ちどまり、じっとりと汗の滲み出ている白い額を、手の甲で押し拭いながら、笠をあげて当惑そうに左右を眺めやった。……その平地はなだらかな二つの丘陵のあいだにひらけていた。八月すえだというのに灼けつくような午後で、人の背丈ほども伸びた雑草や、遠く近く点々と繁っている森や疎林のうえに、ぎらぎらと照りつける陽ざしは眼に痛いほどだった。ところどころ開墾しはじめた土地が見えるけれど、大多分はまだ叢林の蔓るにまかせた荒地で、ことに平地の中央を流れる目黒川は年々ひどく氾濫するため、両岸には赭い砂礫の層が広く露出していた。

「……さて、どう捜したものか」途方にくれてそう呟いたとき、虎之助はふと眼をほそめて向うを見た。白く乾いた埃立った道を、こちらへ来る人影が眼についたのだ、筍笠を冠り、竹籠を背負っている、付近の農夫でもあろうかと思っていると、近寄って来たのは十七八になる娘だった、虎之助は側へ来るのを待って、

「少々ものを訊ねる」と、声をかけた。

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