山本 周五郎
ちくしょう谷
一
朝田隼人が江戸から帰るとすぐに、小池帯刀が訪ねて来た。
「こんどの事はまことに気の毒だ」と帯刀は挨拶のあとで云った、「しかし織部どのと西沢とのはたしあいは、斎藤又兵衛の立会いでおこなわれ、正当なものと認められたし、西沢は三年間の木戸詰に仰せつけられて山へいった、事ははっきり始末がついたのだから、どうか騒ぎを起こすようなことはしないでくれ」
隼人は伏し眼のまま黙っていた。
山本 周五郎
一
朝田隼人が江戸から帰るとすぐに、小池帯刀が訪ねて来た。
「こんどの事はまことに気の毒だ」と帯刀は挨拶のあとで云った、「しかし織部どのと西沢とのはたしあいは、斎藤又兵衛の立会いでおこなわれ、正当なものと認められたし、西沢は三年間の木戸詰に仰せつけられて山へいった、事ははっきり始末がついたのだから、どうか騒ぎを起こすようなことはしないでくれ」
隼人は伏し眼のまま黙っていた。