山本 周五郎

だだら団兵衛

一

雨もよいの生温い風が吹いている。

ここは鈴鹿峠の裏道、俗に三本榧と呼ばれて、巨きな榧の木が三本、のんと立っている峠の八合目近くだ。

とっぷり暮れた暗い夜道を、足早に登って来る一人の侍がある。六尺たっぷりという身丈に、三尺余る無反の強刀を横へ、急ぎの旅で夜行するらしく、とっとっと三本榧までやって来た。すると――ふいに傍の雑木林の中から、ばらばらと十四五名の荒くれ男がとび出して来て、

青空文庫の作品カード