山本 周五郎

留さんとその女

留さんは通船会社の万年水夫である。

彼はもう三十八になる、蒸汽河岸きって――いや村の漁夫たちを入れても――いちばん色の黒い男だ。黒いといってあんな黒さがあるだろうか、噂によると、

「どんな暗闇のなかでも留さんの顔だけは黒く見える」

といわれている。

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