山本 周五郎
違う平八郎
一
永禄十三年正月元日、尾張国清洲城は、祝賀の宴で賑わっていた。
東海の雄今川義元を田楽狭間に屠ったのが二十七歳、それ以来斎藤龍興を降し、近江十八城を抜き、征馬を駆って摂津、河内を蹂躙した織田信長は、威勢ようやく天下を呑むの時期にあった。
――殊に前年の冬、伊勢の北畠倶教を攻破った後のことで、年賀の宴はそのまま勝戦の祝いをも兼ね、城内は歌舞歓声にどよみあがっていた。
山本 周五郎
一
永禄十三年正月元日、尾張国清洲城は、祝賀の宴で賑わっていた。
東海の雄今川義元を田楽狭間に屠ったのが二十七歳、それ以来斎藤龍興を降し、近江十八城を抜き、征馬を駆って摂津、河内を蹂躙した織田信長は、威勢ようやく天下を呑むの時期にあった。
――殊に前年の冬、伊勢の北畠倶教を攻破った後のことで、年賀の宴はそのまま勝戦の祝いをも兼ね、城内は歌舞歓声にどよみあがっていた。