山本 周五郎
月の松山
一
宗城孝也は足袋をはきながら、促すように医者のほうを見た。花崗道円は浮かない顔つきで、ひどく念いりに手指を拭き、それから莨盆をひきよせて、いっぷくつけた。
「やはりそうですか」と孝也が訊いた。
道円は聞えなかったように、じっと、煙管からたち昇る煙を見まもっていた。
山本 周五郎
一
宗城孝也は足袋をはきながら、促すように医者のほうを見た。花崗道円は浮かない顔つきで、ひどく念いりに手指を拭き、それから莨盆をひきよせて、いっぷくつけた。
「やはりそうですか」と孝也が訊いた。
道円は聞えなかったように、じっと、煙管からたち昇る煙を見まもっていた。