山本 周五郎
討九郎馳走
一
「しばらく、しばらくお待ち下さい」兼高討九郎はそわそわしながら急に面をあげて云った、「ただいまお達しの御意、いまいちど仰せ聞けられとうございます」
「その必要はない」老職水野主馬は、討九郎がそう云うだろうとかねて期していたようすで、あらぬ方へ眼をやりながら云った、「きたる六月より徒士組支配を免じ、馳走番仰せつけらる、それだけのことだ、わかったら退ってよろしい」
「それは、その、御上意でございますか」
山本 周五郎
一
「しばらく、しばらくお待ち下さい」兼高討九郎はそわそわしながら急に面をあげて云った、「ただいまお達しの御意、いまいちど仰せ聞けられとうございます」
「その必要はない」老職水野主馬は、討九郎がそう云うだろうとかねて期していたようすで、あらぬ方へ眼をやりながら云った、「きたる六月より徒士組支配を免じ、馳走番仰せつけらる、それだけのことだ、わかったら退ってよろしい」
「それは、その、御上意でございますか」