山本 周五郎

ばちあたり

一

私をみつけるとすぐに、弟の啓三は例のとおり大きく手を振った。私は気がつかないふりをして、三番線のプラット・ホームのほうを見ていた。啓三は近よって来ると、これまた例の如く私の肩を叩いた。彼の体から香水が匂った。

「早かったね」と啓三が云った、「病院のほうはいいの」

私は黙って頷ずいた。

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