山本 周五郎
百足ちがい
一
江戸の上邸へ着任した秋成又四郎は、その当座かなり迷惑なおもいをさせられた。
用もないのにいろいろな人が話しかける。役部屋にいると覗きに来る者がある。御殿の出仕にも退出にも、歩いていると通りすがりの者が、すれちがいざま同伴者に、
「あれだあれだ、あれだよ、百足ちがい」
山本 周五郎
一
江戸の上邸へ着任した秋成又四郎は、その当座かなり迷惑なおもいをさせられた。
用もないのにいろいろな人が話しかける。役部屋にいると覗きに来る者がある。御殿の出仕にも退出にも、歩いていると通りすがりの者が、すれちがいざま同伴者に、
「あれだあれだ、あれだよ、百足ちがい」