山本 周五郎
めおと蝶
一
「ただいやだなんて、そんな子供のようなことを云ってどうなさるの、あなた来年はもう二十一になるのでしょう」
「幾つでもようございますわ、いやなものはいやなんですもの」
こう云って文代はすました顔で菓子を摘んだ。小さい頃から、「あたしのお鼻はてんじょうを向いているのよ」と自慢していた鼻が、そんなふうにすますと正しく反ってみえ、子供っぽい愛嬌が出るので面白い。信乃はつい笑いそうになりながら、茶を注いでやった。
山本 周五郎
一
「ただいやだなんて、そんな子供のようなことを云ってどうなさるの、あなた来年はもう二十一になるのでしょう」
「幾つでもようございますわ、いやなものはいやなんですもの」
こう云って文代はすました顔で菓子を摘んだ。小さい頃から、「あたしのお鼻はてんじょうを向いているのよ」と自慢していた鼻が、そんなふうにすますと正しく反ってみえ、子供っぽい愛嬌が出るので面白い。信乃はつい笑いそうになりながら、茶を注いでやった。