山本 周五郎
樅ノ木は残った
柿崎道場
新八の顔は血のけを失って蒼白く、汗止めをした額からこめかみへかけて膏汗がながれていた。躯も汗みずくで、稽古着はしぼるほどだったが、それでも顔は蒼白く、歯をくいしばっている唇まで白くなっていた。
躰力も気力も消耗しつくしたらしい。眼の前にいる柿崎六郎兵衛の姿もぼんやりとしか見えず、ただ六郎兵衛の木剣だけが、ぞっとするほど大きく、重おもしく、はっきりと見えた。
「打ちこめ、来い」と六郎兵衛が云った。
山本 周五郎
柿崎道場
新八の顔は血のけを失って蒼白く、汗止めをした額からこめかみへかけて膏汗がながれていた。躯も汗みずくで、稽古着はしぼるほどだったが、それでも顔は蒼白く、歯をくいしばっている唇まで白くなっていた。
躰力も気力も消耗しつくしたらしい。眼の前にいる柿崎六郎兵衛の姿もぼんやりとしか見えず、ただ六郎兵衛の木剣だけが、ぞっとするほど大きく、重おもしく、はっきりと見えた。
「打ちこめ、来い」と六郎兵衛が云った。