山本 周五郎
日本婦道記
一
妹たちが来たとき弥生はちょうど独りだった。良人の三右衛門はまだお城から下らないし、与一郎も稽古所から帰っていなかった。二人を自分の部屋へみちびいた弥生は縫いかけていた物を片つけ、縁側に面した障子をあけた。妹たちがきっと庭を見るだろうと思ったので、けれども妹たちはなにやら浮き浮きしていて、姉のこころづかいなとまるで眼にいらぬようすだった。
「きょうはお姉さまにご謀反をおすすめしにまいりました」
そう云いながら部屋へはいって来た小松は、そのままつかつかと西側の小窓のそばへゆき、明り障子をあけて、