山本 周五郎
日本婦道記
一
「ちょうど豆腐をかためるようにです」
良人の声でそう云うのが聞えた。
「豆を碾いてながしただけでは、ただどろどろした渾沌たる豆汁です、つかみようがありません、しかしそこへにがりをおとすと豆腐になる精分だけが寄り集まる、はっきりとかたちをつくるのです、豆腐になるべき物とそうでない物とがはっきり別れるのです」
山本 周五郎
一
「ちょうど豆腐をかためるようにです」
良人の声でそう云うのが聞えた。
「豆を碾いてながしただけでは、ただどろどろした渾沌たる豆汁です、つかみようがありません、しかしそこへにがりをおとすと豆腐になる精分だけが寄り集まる、はっきりとかたちをつくるのです、豆腐になるべき物とそうでない物とがはっきり別れるのです」