吉川 英治
江戸三国志
伊太利珊瑚
うす寒い秋風の町角に、なんの気もなく見る時ほど思わず目のそむけられるものは、女の呪詛をたばねたような、あのかもじのつり看板です。
丈の長いおどろしき黒髪が軒ばに手招きしている小間物店は、そこのうす暗い奥に、とろけそうなたいまい、鼈甲、金銀青貝の細工の類が、お花畑ほど群落していようとも、男にとっては、まことに縁なきけんらんで、それに女性の蠱惑を連想すれば、かえって魔術師の箱をのぞくようなふしぎな気味わるさにとりつかれる。
よ、つ、め、や。
吉川 英治
伊太利珊瑚
うす寒い秋風の町角に、なんの気もなく見る時ほど思わず目のそむけられるものは、女の呪詛をたばねたような、あのかもじのつり看板です。
丈の長いおどろしき黒髪が軒ばに手招きしている小間物店は、そこのうす暗い奥に、とろけそうなたいまい、鼈甲、金銀青貝の細工の類が、お花畑ほど群落していようとも、男にとっては、まことに縁なきけんらんで、それに女性の蠱惑を連想すれば、かえって魔術師の箱をのぞくようなふしぎな気味わるさにとりつかれる。
よ、つ、め、や。