丘 浅次郎

動物の私有財産

人間社会では財産はきわめて大切なもので、ほとんど生命に次いで貴重なものというてよろしい。財産のない者はささいなことさえも容易にはできぬが、財産のある者は勝手次第なことをなして毫もはばからない。ドイツ語で財産のことを Verm※(ダイエレシス付きO小文字)gen(なし得る)と名づけるのは全くこのゆえであろう。試みに Ein Mann ohne Verm※(ダイエレシス付きO小文字)gen(財産なき男)と書けば「なし得るなき男」とも翻訳することができるが、かくてはもはや人間一人前の資格はない者と見なさねばならぬ。また治るべき病も財産のないために治し得ぬこともあり、借金の返せぬために首をくくる男もあって、生命が貴いか財産が貴いか判然せぬごとき場合さえすこぶるしばしばある。財産なるものは人間社会ではかくまで重要なものであるが、さて他の動物ではいかん。他の動物では財産はいかに保護せられ、いかに蓄積せられるか、財産は何の役に用いられ、また何代目まで相続せられるか。人間と他の動物との財産制度を比較して見ると、いかなる点までは互いに相一致し、いかなる点において相異なるか。またそのため人間社会にはいかなる結果が生じたか。われらが今ここにいささか述べようと思うのは上のごとき諸問題についてである。

そもそも私有財産とは天地間に存在する物の中から、自身一己の用に供するために、その一部を区画して占領したもので、他に奪い取られぬためには、つねにこれを完全に保護しうることが必要である。いかに自身一己のために用いるつもりであっても、自身にこれを護ることのできぬもの、また相互の間に各自の所有権を尊重すべしという

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